「えへへ、・・w俺、ずっと、待ってたんすよ・・・・会える時を・・・こんなとこで会えるとはねぇ~!」
その台詞を信じるとすれば、このザンバラヘアの目のギョロッとした不気味なアバターと幸子は知り合いなのだろう。
嫌、待てよ、この話し方はさっきも書いたが、ヤッパリ、どこかで聞き覚えのある声だ。
そうだ、この語り口は、あの“涼”ではないか?!
この物語の最初の方に登場してきた幸子のボーイフレンドだ。
「信じられない!!私(わたくし)あなたの事、本当に何も知らないっていうのに!!その知ったかぶり!!!出て行って下さい!!出て行かないと蹴りますよ!!!」
知ったかぶりとは言ってはみたものの実際、涼と幸子はリアルで知り合いだった。
なので、“本当に何も知らないっていうのに!!”と言っている幸子の方が大嘘つきだと言うのが正しかろう。
「そんな冷たいこと言わないで下さいっすよぉ~~~!!俺、ずっと会いたくて、会いたくて、寂しかったんすからぁ~~!!!」
そういいながら、涼が、このバーチャルの桃源郷で、どこで覚えたのか、妖しい煌びやかな踊りを舞いだしたのだ。
このバーチャルではダンスという機能は確かについていたがその機能の中にもない、見覚えのない奇妙な踊りであった。
いったい、どうやってこの踊りを編み出したのであろうか?
また、例のユミコが使っている特殊能力のようなものの一種を涼も持っているとでもいうのか?
謎は深まるばかりだ。
そうこう考えている間にも、涼はバック転をしたり、逆立ち姿のままバーチャル桃源郷のルームの中を飛び跳ねたりしていた。
「やっぱり、ここって、いいっすねぇ~~!!つまらない時はここに限るっすよねぇ~~!!」
まるで踊る阿呆とみる阿呆のように幸子とユミコとそして義男と15人とそれプラスの陰謀集団達でさえもその奇妙で斬新な踊りを惚けたように見守っていたのだ。
その姿はまるで、あんぐりと口をあけたままの状態の観るも無残で無様な踊りの観客であり、滑稽な阿呆集団その物であった。
「もう、いい加減にして下さい!!!」
時空を切り裂くような幸子の金切り声、(まあ、バーチャルなので太文字のみの表現だが・・)で、その場はまたピリリと引き締まり、それと同時に涼の姿はスッと消えてしまったのだ。