義男は、さらに懇々と話し出した。
「そして、一度誘い込んだら、後は・・・」
そういいかけた時だった。
哲史がイキナリ話題に割り込んできたのだ。
「わかってらぁ!そん時は俺に任せろ、一度その蜘蛛の巣に入ってきたら最後、俺の仲間みんなで、そいつらを見張って二度と出れないようにしてやるぜぇ!!」
と勢いよく捲くし立てて来たのだった。
すると他の男たちも皆口々に
「そうか、そういうことか、それなら俺らにもできるなぁ」
「ようし、閉じ込めてやる」
「その中に誘い込んだら姿を隠しながら、そいつらに俺らに対する礼儀作法をタップリ教え込んでやる」
“そいつらに”といった者がいた。
確かに幸子だけではない言い方だ。
もちろん、それはそうだ。
男を騙して手玉に取るような女性は狭いようで広い都内では、何も幸子だけではないのだから。
ここに集まったのは幸子に騙された男達ではあったが幸子以外でも噂がある人物や目ぼしい悪女を次々と義男が話すバーチャル空間に閉じ込めてやるという意気込みが皆の様子から手に取るように感じられた。
「閉じ込めるにはそこに行くしか楽しみがねぇようにそいつらの家に盗聴器を仕掛けてノイローゼにして、そこで話すしか楽しみがないようにしねぇとなぁ」
「すげぇ、お前頭いいなぁ」
などと仲間で言い合っているうちに、スッカリ話が途切れてしまったが、また続けて義男が話し出した。
「そうだね、そうしたら効果的だね。」
そしてさらにまた話し出したのだ。
「誘い込んだら、そこで僕はあることをしようと思っているんだよ、それはちょっと特殊なことだけど、きっと、それをすることによってその人たちも生まれ変わる可能性があるからね」
哲史がまたものすごい目つきで義男を睨んだ、どうもいけ好かないといった感じだ。
「おめぇ、何かちょっと変わっているよなぁ、時々とてつもなく可笑しなこといいやがる」
「おい、それはいったいどこのことだ?!早く教えろよ!」
と少し短気な哲史が急かすと、義男は今日、新宿のマクドナルドのランチ時に集まった15人のメンバー全員の前で閉じ込める場所についての説明を始めたのだった。
「それは、最近、僕が発見した場所なんだけどね、ネットから入っていけるんだよ」
「ほほう!」
数名が感心したように感嘆の声を挙げた。
この中で一番気の短い哲史だけは疑り深い目つきで義男のことをジッと睨んでいた。
虫が好かないという奴だろうか?
義男がいう閉じ込める場所とは、簡単に言えば、今、流行のバーチャル空間のことだった。
実はこのバーチャル空間の中でリアルと殆ど同じように生活ができる場所があるのだそうだ。
そこへさっきいった人物たちを追いやったらどうだという意見だった。
「でもどうやって閉じ込めるんだ、ネットの中に、俺らがその場所を説明したって俺らが待っているって分かったら絶対に来ないぜ。」
一人がそう反論したが、義男はそれに対して取り乱すこともなく冷静沈着にこう答えた。
「大丈夫、そこは自分の顔をみせないで色んなタイプに変身できるんだ、どうにか誘い込めさえすれば、あとは何とかなるよ」
「でも、その誘い込み方がわからねぇよ!」
一人がそういうと皆、口々に“そうだよなぁ”とか言い出したのだった。
「現代は殆どの人がネットをやっているんだ、だから、その人たちが目に付きそうな場所にそこのバーチャル空間の宣伝を絶えずすればいいんだよ、そうすれば必ずやってくる!」
「本当かよ!」
「くだらねぇ、そんな簡単に、うまくいく訳ねぇよ」
反論が次第に増えていった、すると義男は
「だから仲間を増やすんだよ、そのこバーチャルの宣伝を活発にしてくれる仲間を一人でも多く増やすんだよ」
義男は確固たる自信がある感じで強くそう言ったのだった。
「幸子にだまされたのは僕らだけではないはず、宣伝業界にも沢山いると思うよ、だから説得すればみんな動くと思うんだ」
この15人の考えは、皆、怒りと復讐に心が燃え立っているのは同じであったがある考えに関しては大きく真っ二つに考えが分かれていたのだ。
それは、ライバルをやっつけるか、本人をやっつけるかのことであった。
「俺は本気だぞぉ~~!このままじゃ済ませねぇぞぉ」
と一人が叫べば、他の者達も
「おお、そうよ、まずは閉じ込めちまえよぉ、あいつら全員」
「あいつらって?そして、どこへ?」
と涼が驚いて問いかけると
「そうだよなぁ、本気で閉じ込めたら監禁罪だもんなぁ~」
と相手も少し怯んだようだった。
「でも、悔しいよぉ~~まじ・・・w」
気づけば一人の背の低い浅黒い男は惨めにもその場で涙をポロポロと落としだしのだった。
「おい、泣くなよ!こんな所で、みんな見てるぞみっともねぇぞぉ」
と哲史が制したのだった。
「実は結婚しているって噂も俺この間、聞いたんだぜぇ」
と突如また別の男がそう語りだした。
涼は気がおかしくなりそうだった。
もし、それが本当ならあの女は、幸子は詐欺女だと本気で思ったのだ。
涼は顔から血の気が引いて蒼褪めたがどうすることも出来なかった。
「何かを行動する前に、もっと仲間を集めねぇかぁ」
また一人がそう提案すると
「そうだな、なら、またネットで集めるかぁ!」
と気がよさそうな男が発言したのだった。
「みんなを閉じ込めるいい場所があるよ」
突然そういったのは、このメンバーの中でも珍しく知性的なタイプの義男という男だった。
マクドナルドのチーズバーガーにパクつきながら、そう大声でまくしたてたのは、あの幸子に捨てられた涼だった。
慌てて話したためか、口の周りにチーズが少しついたままだった。
「俺なんか高い海外のチョコレートを一ダースはあいつにプレゼントしたぜ!」
「俺は、あいつの酒に付き合って飲み代をぼったくられたな・・・・wありゃぁぼったくりと同じだ」
などと、そこに集まった15人の男共は口々に自分が幸子に受けた屈辱を語りだしたのだった。
「少しは相手の懐のこと考えられないのか・・・」
とある者が言えば、
「あいつ、少しレズの毛があって、俺が知っている半分風俗、半分キャバクラで働いている女と付き合っていてさ、金持ってりゃあ誰でもいいんだぜ、つまりはよぉ」
とまた先程、話していた哲史が話しに入ってきた。
「このままじゃすまねぇ・・・なぁ、そうだろう」
とある男が言えば、
「あたりめぇよぉ、俺にいい考えがある・・・まかせろ!」
別のものが息巻いたのだった。
「いい考えって何だよ!」
と哲史が急かすと、その男はこう答えた。
「俺、Sのファンなんだけどさ、Sのファンには怖いお兄ちゃんもいっぱいいるんだぜぇ」
「それが、どうしたんだよ」
と誰かが突っ込めば、
「いざとなれば、ズバンだ!!」
「何を隠そう、俺は火炎大魔王だ!」
「俺はOのファンなんだけど、誘い出して落とすのがいいと思うぜぇ」
聞いているとゾッとするような内容の会話だった。
涼はこれらの仲間とネットで知り合ったが、こんなに短気な連中を知り合ったことを今更ながら恐ろしく感じヒヤヒヤしだしていた。
―春のある日の新宿のマクドナルドで―
涼が仲間とワイワイがやがやと色んな話題に花を咲かせていた。
いや、それは間違いだ。
色んな話題ではなく話題は唯一つだった。
そして、その話題とは幸子の話だったのだ。
実は最近流行のネットで知り合った面々だった。
そして、メンバーの全員が男だった。
彼らの共通点はみな幸子を知っているということだった。
そして似たような体験を各々が持っているのも事実だった。
その体験は紛れもなく幸子に冷たくあしらわれたり、ぞんざいに扱われたり素気無くされたというものだった。
同じ仲間で集まり励ましあえば、いくらか気持ちも楽になり、勇気付けられるというものだった。
そしてこの集まりの中には、なんとあの伝言女性Aを知っている者もいたのだった。
その男は仲間にこう語っていた。
「俺は、幸子も幸子と今付き合っている女の子も両方知っている、あいつら男を舐めているぜ、俺は幸子の付き合っている奴の店も知ってるがすごい使わされたがそれほど楽しくもなかった、なのに俺が使ったその金をそのまま幸子に使っていやがったんだ」
とまあ、こんな内容の話だった。
この男の名前は哲史というが彼がいうには、二人は組んでいて出来ていてどうしようもない奴らということになっていた。
また別の男はこう嘆いていた。
「俺、Iのファンだったけど、ファン止めることにした、腹括ったよ」
この男はタレントのIのファンだったがどことなく面ざしが似ていた幸子にこっ酷く振られた為にショックでIのファンクラブを辞めることに決めたのだった。
この集まりのメンバーには結構タレントファンが多かった。
Iの他にもOやSのファンもいた。
今日、新宿のマクドナルドに集まった総勢は15名だった。
「俺は、すし屋で幸子に『唇という漢字もかけないんですか?馬鹿ですね』って言われたのが今でもムカツクッす!」