幸子は指輪のサイズは7号であった。
自慢のその細い指を空に翳してみては、幸子の得意の“おほほ”と笑っていた。
ある時、幸子がデートの相手の前でシルバーのリングをした指をチラつかせて薄ら笑いを浮かべていた姿がまるで昨日のことのように頭の中に彷彿として蘇る。
その姿をみて素直に感銘して指輪をプレゼントを贈りたいと思う者もいれば、“いい加減にしろようす気味悪い”と思った者達も多かったことだろう。
幸子は自分は編集者に勤めていて、将来は小説家志望であり、仕事をやめたのちは銀座でアルバイトをしているとしきりに出会う者達に豪語していた。
そんな彼女の夢を叶えてやろうと、必死にアルバイトや会社で稼いだ金を図書券に換えてプレゼントに励む輩も多かったことだろう。
また無類のゲーム大好きっ子だった幸子は、魔界転生や、その他訳の分からない、プレステーションもののゲーム類を集めまくっていたのだった。
そんな彼女を喜ばそうとこれまたゲーム類のプレゼントに励む者たちも絶える事はなかった。
問題は、やはり、その人数がまるで鼠講のシステムのごとく増えすぎて、気づけばある一つの会社や組織を乗っ取るほど増えてしまったことだった。
こうなるともう会社を乗っ取られるかどうかの問題にまで発展するのは目に見えていた。
最悪なことといえば、部下までならまだしも、その組織や会社の上司連中にまで幸子が浸透してしまってきているという恐ろしい事実が浮かび上がってきたことだった。
さらには、あんな浮気で不埒な性悪な付き合いをたくさんしてしまったせいだろうか?
おそらく現在旦那がいるとしたら、その旦那は紐的要素が大変強く、結婚したからといって真面目に主婦業だけに勤しますことはなく体裁があるので表立って、水商売などで働かしたりはしないが、声だけのバイトや、
今、流行のバーチャル空間内に閉じ込めて自分の働く組織の上司の接待や、お得意様の相手をさせている事も多々あるのではないかと懸念される。
まさにこの妻にしてこの夫ありではなかろうか?
狐と狸の騙し合いのような夫婦の姿がここでもまた浮き彫りになるのだ。
愛憎による執念だけが二人を結び付けたのか?
それだけが絆になり、妻の無くなる事のない浮気に耐え忍んでいたのだろうか?
幸子に彼氏はいないとか独身だと囁かれスッカリと騙され、幸子に心から陶酔し、恋をし、それによって貢ぎ、二人の将来を夢見て投資をして馬鹿をみたことを今更のように悔やんで恨んでいる者たちは想像を絶するほど多いのではなかろうか?
これは現代の我が国、日本において真剣に考えなければならないテーマの一つではなかろうか?
そんな風に感じる今日この頃だ。