憩いの時間
―ある日の深夜0時の都内の某喫茶店でのことだった―
涼はその時、喫茶店で生クリームがたっぷりと入った、熱いミルクココアを飲んでいた。
喉が渇いていたせいもあって一気に飲んだので、口の周りにクリームがついて白くなったのだった。
そんな涼の姿をみつけてクスクスと笑う者が少しはなれたテーブルから現れたのだった。
その時、涼は何だか知らないがとても惨めな気持ちになった。
恥ずかしさで顔が真っ赤になりそうだった。
やっと気持ちが落ち着くと、涼は今度は携帯のメールのチェックに取り掛かりだしたのだ。
「あれぇ、ねぇなぁ、幸子からのメールこねぇなぁ」
とうとうボヤキが出てきた。
もう待ち合わせの深夜0時から5分過ぎたが、幸子はまだ待ち合わせの喫茶店に到着していないのだった。
身に付けていたクリーム色の袖のカワキ色のスタジアムジャンパーを脱いでから、自分が座っている椅子の背もたれに掛けると、涼は椅子の背もたれに仰け反るように大きく伸びをした。
その時、携帯はテーブルの上に無造作に置かれたままだった。
“まだ5分しかたってねぇし、たぶんもう少ししたら、来るよなぁ”
涼はそう思うとまた幸子と会える喜びが心に溢れ、わくわくドキドキしてきた。
その時に、真実を何も知らない涼は、幸子が主婦業に勤しみながら、旦那が夜勤の頃合を見計らって待ち合わせ場所に向かっていたと、思いつくことができただろうか?
それは、どう考えてもできる訳などなかった。
幸子の口から、ハッキリと彼氏はいないと聞いていたし、また“結婚はしないのですか?”と質問をした時も、
「私は御茶ノ水女子大を卒業しました、なので私と釣り合うのは東大卒の人だけです、東大卒の人でなければ結婚はしません」
とキッパリと言い切られていたのだ。
ということはまず自分では絶対無理なのだ。
涼は高校卒業だったから。
しかし、それはわかっていたが、デートの初日からあれだけ奢らされて、しかも彼氏はいないことは確かなのだ。
涼にもまったくチャンスがないわけではなかったので、頑張ろうかなぁと思ってしまったのだった。
それにまだまだ結婚を考えたいわけでもなかったので、とにかく一緒にいるととても楽しいと感じた幸子とまた会いたかったのだ。
と、その時、喫茶店の扉が開く音が聞こえた、涼が扉の方に目をやると幸子の姿がそこに現れた。