哲史が、寄り添うユミコと哲史のいいムードの二人を囃し立てると、さっき空中から突如、落下した時に挫いて痛めてしまった足を庇う様に片手で抑えながら起き上がったのだった。
半透明の上半身姿のまま義男は少し照れ笑いをした。
まだ放心状態のユミコを介抱するかのように義男は幸子の自室の床に崩れ落ちたユミコを抱き起こして肩をソッと優しく抱いていたのだった。
「君も大事な足を痛めてしまったのだね、可愛そうに」
義男がありったけの同情と慈愛を込めて哲史にそう言うと、なんと哲史は憎々しげに歯軋りをしながら義男に対してこう言ったのだ。
「こうなったのも誰のせいだと思ってやがるんだ!お前の‘愛しい者’のせいだろうに!!よう、どう責任取るって言うんだ!!!」
そう斬りつけるように手厳しく哲史に怒鳴られると義男はスッカリ困惑の表情を浮かべすまなそうにこう返答した。
「どうやら僕の計算違いのようだったらしいね、今すぐには無理だけれど、必ず僕の‘愛しい者’の力の素晴らしさがわかってくるからね、でもすぐには無理だよ、何しろ人見知りをするものだからね、馴染むまで、少し時間が必要だと思うのだよ、でも絶対に君達を守ってくれるのは間違いないのだよ、それまで後もう少しだけ待っていて欲しいのだよ」
一気に長く話したので少し目眩がしたのか義男はユミコから離れ額を軽く片手で押さえていた。
「待てだと!人に怪我をさせておいてその言い草はねぇだろうがぁ!!そんなまやかしみたいな当てにならねぇもの誰が信じられるって言うんだぁ~!!」
二人が言い合いをしている最中に敵のはずのユミコのことを幸子が肩をさすりながら必死で意識を呼び覚まさせようとしていた。
敵を救おうとすること自体が、やはり義男から授かった‘愛しい者’の影響だろうか?
「大丈夫ですか?しっかりして!」
その時、幸子の表情がいつもよりやけに色っぽく若々しく輝いて見えたのは気のせいだろうか?
本当にゾッとするほど肌も透き通って白く見えたのだ。
これも‘愛しい者’の摩訶不思議な効力なのだろうか?
幸子の自室の部屋の中の窓から見える外の景色はもう真っ暗で、時計の針は、ちょうど夜の9時を指し示していた。
その時だった。
ユミコの瞳孔がまるで猫の瞳のようにカッと見開き輝いたのは。