―幸子の自室では、まだ寝付かれない女達の会話に花が咲いていた―
「本当に素敵よねぇ~~ダンディーって言うかさぁ~~!!」
と幸子が言えば、
「存在自体が絵になるのよねぇ~~!あんなに素敵だったら体なんて無くたっていいわぁ~」
ユミコが負けずに応戦していたのだった。
勿論、話題の主役は義男の事だった。
幸子とユミコの二人は可愛いパジャマ姿で布団に包まりながら、はしゃいでいた。
その姿は単なるそこら辺にいる無邪気で純粋無垢な乙女達と変わらなかった。
その頃、やはりというべきか義男は自室で、ヘックションッとくしゃみをしていた。
勘が働いたと言えばいいだろうか。
枕を両手で胸に抱きしめながら布団の上に胡座を掻いてユミコが目をキラキラと輝かせながら、ウットリと表情で一人、ニヤニヤとすれば、
「何をそんなに嬉しそうにしているのですか?まぁ、無理も無いけど、義男さんとラブラブですものね」
と幸子が囃し立てた。
義男の事で、話題はドンドン膨らみ盛り上がり、乙女同士の会話は話題に事欠かなかった。
「彼の事を想うと胸がジーンと熱くなるの・・・」
とうとう、そんなことまでユミコが言ってのけたのだった。
ユミコという女は幽体離脱だとかテレポーテーションだとか、摩訶不思議な能力に長けていたが、仕事は挿絵ライターという、ごく一般的なものだった。
まあ、特殊技能と言えば、そう言えなくも無いが。
挿絵ライターの傍ら、美少女マンガなども時折、手がけていた。
なので、美意識に優れていると思われ、恋する相手の男性もきっと美男子なのであろうと想像されるのだ。
やはりというべきか、義男は切れ長の瞳の中々の美男子だった。
そして、その瞳は瞬きをするたび、キラキラと光を放ち、本当に童話の中に出てくる星の王子様の様だった。