そして、その夕美の事を哲史は最初から知っていた訳ではなかった。
哲史が最初から知っている曰く付きの女性は伝言女性Aと幸子だけだった。
一番最初に知ったのが接客の店でバイトしてた伝言女性Aでその次に幸子で最後に夕美の事を知ったのだった。
実際に出会ったわけではなく、それは噂と画像によるものだった。
実は哲史の知り合いには芸能プロモート関係者も多かったので、この夕美というこの問題に関わる曰く付きの女性を知った際に、噂によるとこの夕美なる女性は芸能界に非常に関心が深く一時は目指していた事もあったと言う事実を見逃さなかったのだった。
色々と調査した結果、生きていると判明し、大変、巷で話題性があると判断したので何かに使えると思い立ったのだった。
しかし、どう考えても本人その物を使う事は無理であろうと判断された。
実際、現実でもこの夕美という女性は何度もオーディションとかコンテストを落ちていたが、それよりも何よりも、この女性の曰く付きの過去が、もし芸能界に採用したとしても今後、何らかの障害を引き起こしてしまうのは明らかな事実だったからだ。
哲史や哲史の知り合いの芸能プロモート関係者の判断は正しかったと言えるだろう。
夕美よりもっと数段容姿が優れた過去のない美少女達をイメージタレントとして代用し、完全にはそれを超えた物に進化させた方がよっぽど未来は明るいと思える。
現に今の段階でもしも、本当にその様な者が存在しているとすれば、とっくにある境界線を越えたのではなかろうか?
そういう複雑な様々な状況が背景にある訳だが、とにかく幸子や伝言女性Aそしてユミコ、これらの知る人ぞ知る有名な日本の歴代の悪女達をどうにかしてやらない事には腹の虫が収まらないという奴等がこのバーチャル桃源郷の中で目をギラツカセナガラ蠢いていたのは周知の事実だった。
言い忘れていたがユミコも大変美しい女性だったが、―歴代悪女達の中でもその美貌は一、二を争っていた―過去に何人も男を泣かせていたのだった。
言うなれば彼女も歴とした正真正銘の悪女だった。
義男と幸子とユミコが楽しげに会話をしていたのもつかの間で、なんだか周囲はやたら殺気立っていた。
それは無理もなかろう、同じ復讐計画の陰謀仲間のはずの義男がその事も忘れたかのようにデレデレと鼻の下を伸ばして美女に囲まれ一人調子付いていたからだ。
その時、業を煮やして一人の者が叫んだ。
「諸君!こうしていても時間の無駄だ!このふざけた女達をどうするか裁判を開こうではないか!!」