「死刑だなんて・・・!可愛そうだと思わねぇのか?!」
そう言いながら、いつもの習慣で泣き虫米田は大粒の涙をポロポロと流したのだった。
短い付き合いだったが、このバーチャル空間で幸子やユミコと過ごした時間は米田にとってまるで夢のように幸せな一時だったのだ。
だから、その楽しい時間の相手をしてくれた女性達が死ぬかもしれないと言う絶望感と恐怖は言葉ではとても表現し難い物があったのだ。
今の米田には、悲しみに打ちひしがれながら、ただ涙を流すことくらいしかできなかったのだ。
「ゴホン!!意義がある方は前に進み出てから申し立てるようにして下さい!!」
ミントが片方の拳を口元に当てて軽く咳払いをしてからそう言い放った。
その次の瞬間に、とても奇妙な光景が目に飛び込んできた。
その光景とは、このバーチャル桃源郷のサイトのホームページにも載っていないはずのまるでサバトの集団が着るような不気味な三角帽子付の白地に赤い逆さ十字架模様付の黒ミサ儀式用着衣を頭からスッポリ被った数名の悪の使途が突如現れ、ミントのいる祭壇のような家具のコーナーの前までポンポンと軽やかに飛び跳ねながら踊り出た、。。その光景の事であった。
本当にそれはあっと思う間の一瞬の出来事だった。
そしてその不気味な集団の全員が右手にワインを持ち、右手を頭より上に高く持ち上げてワインを天に向かって翳したのだった。
それは、これから始まる何かの儀式の余興なのだろうか?!
確か、カトリックのミサでは、ワインをキリストの血に聖別して飲むが、黒ミサでは幼児の血を飲み干す。
そして、祭壇には逆十字が架けられ、暴力、淫行などといった行為が儀式の中で繰り返されると聞いた。
そう考えるともしかしたらグラスの中の真っ赤な液体はワインではなくて幼児の血だとしたら本当に考えるだけで寒気がしてゾッとして来る。
「私(わたくし)気が遠くなりそうです」
幸子が息苦しそうにそう言えば
「義男さんともこれきりだなんて本当に悲しいわぁ!でも、今まで本当に有難う、とても楽しかったです」
とユミコも懸命に襲い来る恐怖心を振り払いながら親愛なるメルヘンの星の王子、義男に最後の別れを告げていた。