幸子が掴んできた手を特に振り払うこともせず、涼は幸子の変態趣味にショックを受け、それと同時に自分の都合上幸子の涼の部屋へ行きたいという申し出を断ったもののその反面気分は上機嫌になっていた。
そのため幸子が片手でまだしっかりと抱えていたホモ雑誌をヒョイと指差すと、
「それ俺が買ってあげますから、今日部屋へ連れて行けないお詫びっすよ、いいっしょ」
とニカニカと笑いながら言ったのだった。
雑誌は全部で4,5冊はあった。
それを全部幸子から取り上げると涼はレジへ行きあっという間に清算をしてしまったのだ。
「どうも、ありがとう」
買った雑誌類を手渡すと嬉しそうに幸子が微笑んでいた。
「これから行きたいお店があるんですけどいいですか?」
また幸子がすかさずこう尋ねてきたのだ。
「いいっすよ、俺こう見えてもすごい暇なんすよ、お供しますよ」
とすぐに涼が答えた。
「これから行く場所は私のお気に入りの場所なんです」
「そうっすかぁ、いいすっねぇ」
幸子の後を涼がついて行くと、今度はさっきより少し広い通りに出たのだった。
そこは一風変わった景色だった。
特にどこがどうという訳でもなかったが、同じような外観の店が一列にずらっと立ち並んでいた。
かといってそれが商店街ではないのは一目瞭然であった。
どうみてもバーかスナックであるのは間違いなかった。
その中の一軒を幸子が指差した。
「あそこです」
そういうと幸子はまたスタスタと歩き出した。
「入りましょう」
たくさんのスナックかバーらしい並びから一軒の店を選んでその前に立つと幸子は涼のことを入るように促した。
店の中に入ると、その異様な風景に、ゾッとするものを感じずにはいられなかった。
とにかく何かこう普通とは違うことに涼は入ってすぐ気づいたのだった。