涼はまたかぁと思った。
次々と発覚する幸子の変態趣味に涼は驚きの気持ちを抑えきれなくなっていた。
今にも眩暈や憂鬱が発症しそうだった。
そして、幸子にまたしてもやられた気分になった。
心の中で何度も自分で自分に自問自答していた。
いつまでも永遠にみつからない答えを追い求めていた。
“それはないっすよぉお!これじゃ、幸子さんまるでただの変態じゃないっすか”
“もっとまともなデートコースってないんすか?”
声にならない言葉が脳裏を駆け巡った。
その想いを声にしてもよかったが、まだ涼はその言葉を発したために幸子とお別れに
なるのが怖かったのだ、なのでどうしてもそれは出来なかった。
そうこうしているうちにまたいつものように幸子の飲みが始まっていた。
例のごとく浴びるように酒を呷りだしたのだ。
いくども止め処なく、色んな種類の酒を(人はそれをチャンポンというが)とっかえ
ひっかえ注文して飲みまくっていた。
それらの酒類をサイダーかオレンジジュースのようにゴクゴクと飲み干していた。
誰もそれを止めることはできなかった。
止めようとするものすらいなかった。
なぜなら、幸子は酒を飲むといつになく上機嫌で、とても陽気になるから。
そんな幸子をみて皆、ずっとそのままの状態でいて欲しいと願ったのだったから。
上機嫌の幸子が涼のほうに向き直ってこう言ってきた。
「今日は、お迎えが来ますよ」
「お迎えって誰っすか?」
「あとでわかります」
それ以上は聞けなかった。
それ以上聞いてはいけないと感じさせるような幸子のキッパリとした毅然とした話しぶりだったのだ。
しかし、一体、誰が迎えに来るのだろう?涼は酔いを醒ます為にさっき注文してテーブルに届いたウーロン茶をごくごくと飲んだ。