「もちろんだよ、約束は守るさ」
経営者であるその紳士はニコッと微笑んだ。
そこへ消えていたおなべホストがまたヒョッコリと現れた。
「お紅茶でもお持ちしますか」
「あら、気が利くわね、お願いします」
と幸子が言えば、
「僕はコーヒーがいいな、夜更けのコーヒーは乙なもんだよ」
と経営者も話しに入ってきた。
その時、この紳士はとても気のいい社交的な人物だと涼は感じたのだった。
「涼さんはどうしますか?」
とおなべホストが聞くと、
「僕はホットミルクでいいです」
と涼が少し遠慮がちに答えた。
いつのまにかチョコレートボンボンの包みが開けられていた。
「今、少し食べてもいいね」
了解をとるように紳士が問いかけると、
「ええ、もちろんですわ」
と幸子が微笑んだ。
ホッと寛いだ雰囲気が店全体に漂った。
チョコレートボンボンをおいしそうに頬張る幸子はとても満足げだった。
この状態を憩いのひと時と表現してもいいのではないか。
涼は真剣にそう思った。
ヒヤヒヤしたことも確かにあったが、皆でチョコレートボンボンを頂き、お茶をする時間はとても充実しているように感じられた。
こんなにいい雰囲気なら、このままずっと時間が止まればいいとさえ思ったのだった。