幸子は先ほど都内のドトール喫茶室で知り合った女性のことを得意の百戦錬磨の手練手管で、別に煮て焼いて食おうとか思ったわけではなかった。
だが、その知り合った当時は、幸子は気分的にも新天地を求めていて、心が浮かれていたので、とても気になり最初のうちは自分からも電話で連絡を取ったのだ。
知り合った当日の夜もさっそく電話をしたりしていた。
「今日はどうもありがとうございました」
とか、
「とても楽しかったです」
とか、在り来りではあるが、きちんとお礼の言葉を添えた電話内容だったのだ。
少なくとも最初はそうだったし、それからずっと多分そうだったと思う。
実は、このように丁寧に対応した理由としては、幸子にとって当時その女性は大変メリットがあったのは事実だった。
当時その女性はまだ若く、というか童顔で年寄り若くみえる性質だったのが、理由としてあげられるだろう。
従って、その若く見える外見を武器に接客の仕事などに励み、かなり高給なバイト料をもらっていたので、幸子にとってはいいスポンサーになるのは目に見えてわかったので、幸子はこれを逃す手はないと考えたのだった。
いわゆる利用というやつだった。
詐欺というよりは利用という方が当たっているだろう。
しかし、この女性に対しても幸子は独身だと(その頃は本当にそうだったと思うが)言っていたのだった。
これは、もしその当時、結婚していたら、詐欺だと言えよう。
結構、頻繁に会うようになっていた。
その度、図書券や、タクシー代をもらっていた。
そして、何度目かに映画を見に行くことになったのだ。
その映画は誘われた相手の女性のほうは、結構どんな映画だろうとワクワクして楽しみにしていたのだが、映画がみれるという渋谷の某映画館に映画鑑賞の目的で入り、始まった映画をみて唖然とした。
その映画の内容はホラーの一種のスプラッターものだった。
人間の腸とかが体から飛び出たり、人間を切断したりとかと思わず目を覆いたくなるような、とても残酷な内容のものだったのだ。