一人、また一人と幸子の手練手管によって悪の花園に魅入られるようにその毒牙にかかり、二度と這い上がれなくなってしまった人々は日を追うごと増えて行く一方だったのは事実だった。
しかし、その事には、まだ知り合ったばかりの伝言ダイヤルの女性は気づいていなかった。
無論あの涼でさえも幸子と連絡が途絶えてしまったという悲惨な状況下にいたのでそこまでは想像もつかなかったのだ。
幸子と突如、会えなくなってしまった不幸と哀しみで頭がいっぱいでそこまで気が回らなかったのだ。
そんなある日、またしてものうのうと幸子はテレクラや伝言ダイヤルで知り合った新しい遊び相手と都内で戯れていたのだ。
しかもその相手はまたしても女性でその女性とは初めてあったというのに、その日のうちにホテルに行ってしまったのだ。
それもラブホテルではなく新宿の高級ビジネスホテルだった。
その部屋に行く前に幸子は沢山のビールの缶を都内の酒類を扱っているマーケットで買い占めたのだった。
しかし、やはりというか、このお代は相手持ちだった。
パンパンに膨れ上がった沢山のビール缶が詰まった買い物用の白いビニール袋を2つか3つも持って、新宿の某高級ビジネスホテルに入ったのだった。
入ってから始まったことは次のようなことだった。
まずお風呂に入った。
それは、二人別々だった。
先に幸子の相手の女性が入った、幸子が先に入ってくれといったのだ。
その後に相手の女性がお風呂から出てきた時にはさちこはバスローブに着替えて、さっそく、さっき都内のマーケットで買ったビール缶をぐいぐいと煽っていたのだった。
相手の女性が出てくると幸子は飲みかけの缶とコップをホテルの室内の小さいテーブルの上に置きっぱなしで、すぐ風呂場に入っていったのだ。
一時間以上はたっただろうか、ゆっくりとたっぷりと時間をかけて幸子が風呂から出てくると相手の女性はビールは飲まずにあらかじめさっきのマーケットで買ったオレンジジュースを飲んで待っていた。
「あら、美味しそう、お待たせしました」
そういうとテーブルに備え付けてあるソファに腰掛けさっそく飲みの続きにはいったのだ。
その際、オレンジジュースをちびちびと飲んでいた相手の女性は何も言われなくても、当然というようにビールの缶をあけ幸子の為にずっと酒をそそぐ役割分担を果たしたのだった。