哲史がそういうと、義男は、
「僕は別に飛び切り冴えている訳じゃない、ただ正直にこうした方がいいんじゃないかと思うことを言っているまでだよ」
義男の顔が少し照れて苦笑いをしているように見えた。
そしてまた15人のうちのある者はこう言った。
「俺、もし幸子が結婚しているんだったら、別れさせてやりたい」
すると義男がこう答えた。
「それは可能だよ、決して不可能じゃない、その為にはドンドン芸能界とかマスコミに幸子を売り込んでいかないとならないけれどね」
すかさず、涼がその話題に飛び込んできた。
「もしそれが本当に出来るんだったら、俺もそうしたいっす!」
これらの会話は全て情報漏れを防ぐために個人メッセンジャーのパーティールームでなされていたのだった。
15人が同時に話すことができたのだ。
或いは、15人が同時に話すことができるチャットルームなどでだった。
もちろん、15人がいっぺんに集まらない日は15人に満たない人数でそれらの場所で会話をしていたのだ。
「でも、俺らのせいってのは嫌だな、出来れば他の誰かのせいにして別れさせてぇな」
背負うのは嫌だと言いたげに哲史がそう言ったのだった。
今日メッセンジャーのパーティールームに集まったメンバーは皆、黙っていた。
一体、誰のせいにするというのだろう。
そう思った時だ。
「俺にいい考えがある、どうもいけ好かねぇ、あの時のあの女がいいぜ」
その哲史がいう“あの女”とは伝言ダイヤル女性Aのことだった。
哲史がいうにはその女性がまだ幸子に未練がタラタラだって事にして邪魔をしたがっていて、その女性がまだ過去の蓄えがある状態だという設定にして色んな人間を雇って嫌がらせをしているように見せかけようというものだった。
実際に雇って嫌がらせをしているのは自分達だし、雇わなくても自分たちで仲間を募ってやろうというものだった。
それを実行することによって恨みを買わず幸子の家庭を壊すことができ、うまくいけば邪魔者のいけ好かない伝言ダイヤル女性Aも誰かが嫌な奴と思い込んで消してくれるかもしれないと思ったのだ。