ところで、話はまた温泉地にもどるが、幸子と新しく知り合ったばかりの出会い系女性Cは、既に温泉地の宿の部屋に入り、座布団に座り、テーブルでお茶を飲んで寛いでいたのだった。
「それで、私、今日退屈してはいけないと思って絵本を買ってきたんです」
と知り合ったばかりの出会い系女性Cが言うと、幸子はニッコリと微笑み、
「おほほほほ、まあ、それはよく気が利きますね、どうもありがとう」
とその頃、流行だった少女マンガ(確かタイトルは『白鳥麗子でございます』だ)の主人公のように笑いながら答えたのだった。
そう答えたのもつかの間だった。
すぐに例の幸子の悪い癖がここでも、また始まったのだ。
「おビールいいかしら?頼んじゃって」
「もちろん!構わないですよ、ジャンジャンいっちゃって下さい!!」
もちろんこの時点では新しく知り合ったばかりの出会い系女性Cは、まだ、一度飲みに入ると浴びるように飲みまくる幸子の豪快な姿を知らなかったのだ。
気づいた時には既に遅かったとは、正にこの事だった。
幸子が怒涛のようにビールを次から次へと注文しだし、またそれらをごくごくとソーダ水とかオレンジジュースを飲む勢いで飲みまくったのだ。
「幸子さんすごいですねぇ!すごい飲みっぷりですねぇ」
仰天したように今日温泉地へ一緒に同行したパートナーの出会い系女性Cは目をパチパチとさせながら、幸子の飲みっぷりに見入っていた。
その様子は幸子がすごい“のんべぇ”だという実態にさすがに驚きを隠せない様子だった。
「幸子さん、そろそろお風呂入りたいですね」
としばらくしてから、伝言女性Cが頃合を見計らって声をかけたのだった。
それは適切な判断だったといえるだろう。
ちょうど今から入れば夕飯には出てこれるから。
「それじゃ、先に入ってきて下さい!別々に入りましょ」
そう言われて何かとても不自然な気持ちにもなったが、自分は男でもないし、ここで、どうしても一緒に入りたいというのも、おかしな話だったので、出会い系女性Cは素直に一人先にこの宿の風呂場に向かったのだった。
そして、出会い系女性Cが風呂に入っている間も部屋に一人残った幸子は、ずっと部屋でビールを怒涛のように煽り続けていたのだ。