「僕の部屋には自分で捏ねて作った粘土の人形があるんだよ、その人形は人の形をしていてね魔法の儀式によって霊を蘇らせる力があるのだよ」
その時、トナカイのお面のアバターを使用している男が、身震いをしてバーチャルの中で“うぉ~~ん!”と吠えたのだった。
オチャラケであろうか?
それとも、義男のあまりもの馬鹿馬鹿しい愚の骨頂のような話の内容に呆れ返ってしまったのだろうか?
誰もそれを知る由もなかった。
そのトナカイのお面のアバターを使用していた男は、前にマクドナルドで15人で集まった時、突然店の中で涙を流した者だった。
あの背の低い小柄な朝黒い男だった。
彼の名前は米田と言う。
哲史は何故か一言も反論もせずその話に聞き入っていた。
それどころか、早く続きが聞きたいと言う風にも受け取れた。
何故なら義男にこう問いかけだしたからだ。
「ほう!俺もよ、実はよぉう、こう見えても魔術には興味があるんだぜ、本も持っている、だからお前の言うこと全て否定はしないぜ」
さっきまでと違い、すごく理解がある表現だった。
ここで初めて二人の共通項が発見されたとでもいおうか?
ところで、温泉宿にいた幸子と出会い系女性Cだが、あの後、とっくに帰宅をしていた。
温泉旅行の帰りの電車の中では出会い系女性Cは疲れてしまって、ただグゥ~グゥ~と眠っていたのだった。
それはそうだ。
あれほどの大きな作業を終えた後だ無理もない。
作業とは無論、絵本の中から本物のウォーリーを探し出すことだ。
沢山の偽者ウォーリーの中から、本物を見つけ出すのは並大抵の苦労ではなかったのだから。
最後は、また幸子の18番の地下鉄入り口前で二人は右と左に別れたのだった。
しかし、その後、邪悪な陰謀集団の魔の手が二人に忍び寄っていったのは言うまでもない。