幸子も出会い系女性Cも温泉地から戻って来るなり、周囲をあの陰謀集団に見事囲まれてしまったのだった。
もちろん、その行動の根拠は、自分らが義男によって導かれた憩いの場である例のバーチャル空間に導く為であった。
幸子など買い物など用事があって外に出るたび、常に自宅マンションの玄関前やその周囲10平方メートル内に不審人物を発見するたび憂鬱で、軽いノイローゼになりかかっていた。
そうやって狙った相手を憂鬱症で悩ませ、引きもりにし、あのバーチャル空間で遊ぶしか楽しみがない状態にする為であった。
出会い系女性Cもまた同じであった。
出会い系をしようと外にでて待ち合わせをすると必ずその場所に待ち合わせをした相手とは違う別の相手も立っているのだ。
もっと明確に表現するならば服装は同じだが顔の特徴がまったく違うものも多かった。
出会う前に顔のタイプを聞くことも多かったのだ。
不審な人物のタイプでもっとも多かったのが目がギョロッとしていて、どうも風采が上がらない感じの面長のタイプだった。
それは幸子の周囲に現れる不審人物の特長とも共通していたのだ。
無論、時には別口の不審人物タイプも現れるには現れたが、もっとも目立ったのはどうしてもこのタイプなのだ。
それから、幸子も出会い系女性Cもどうやら自宅を盗聴されているようで、外で出会ってお茶をした初めて出会い系で会った相手に家の中で会話した事を聞かれてしまったとしか思えないような嫌味を言われることが度々増えてきたのだ。
その為、二人とも外に出かけるのが嫌になってしまい、当然のように毎日暇だとあのバーチャル空間に通うようになっていた。
実は、出会い系女性Cも自分のメールBOXの宣伝部分に例のバーチャル空間の宣伝をみつけたのだった。
寂しかったのでつい興味を持ってしまったといった方が早いだろうか?
幸子も出会い系女性Cもいつのまにか、バーチャルの無限に広がる無次元の桃源郷の中を暇さえあれば彷徨うように変貌してしてしまったのだ。
もちろん、邪悪な陰謀集団による待ち伏せや張り込みの嫌がらせで、軽いノイローゼにさえならなければ、こんなにもしょっちゅうバーチャル空間に来ることはなかっただろう。
しかし、彼らからしたら、好みの相手とはお茶一回きりでいつも終わってしまうので、このバーチャル空間に誘い込んで閉じ込めるしか、交際を続行する道はないと確信し、その為の判断と決断の行動だったのだ。