早速、これから事の準備に取り掛かろうと言う事になり、15人とそれプラスのメンバーは、それぞれが自分の得意と思われる分野に取り組んだのだった。
例えば、監視役や尾行役、そして、出会い系のやらせの客として実際に一人ひとりの女性と会ってみて、状態を探ったりとだった。
それから、もちろん、引き合わせるためにタレントグッズの高価な買い物をした顧客の行動を調べることも怠らなかったのだ。
そして、月日は流れていった。
蟻地獄
―ここは義男のリアルの部屋だ―
義男が自室に篭って部屋の電気を消し、真っ暗の部屋の中でポツネンとしていた。
しかし、正確に言えばただ立ちすくんでいた訳ではなかった。
その手には、蝋燭を握り締めていた。
大きな太い赤い蝋燭だ。
その蝋燭を握り締めたまま、義男は自室の中央で大きく深呼吸をしたのだった。
とても深い、大きな溜息を伴った深呼吸だった。
暫くすると、部屋の真ん中辺りから、ボォ~~ッと明かりが発せられたのだ。
それは義男が握り締めた蝋燭の明かりだった。
おそらく、義男が蝋燭を握っていないほうの手で持っていたライターで火を付けたのだろう。
義男が蝋燭を握り締めていたのは右手で利き手だった。
左手で蝋燭に火を付けると、義男の顔がボォ~~ッと薄暗がりの中でオレンジ色に煌々と照らし出されたのだった。
蝋燭の明かりを頼りに自分の机の引き出しを一つ引き出すと、その中からある物を愛おしそうに取り上げたのだった。
そして、取り出した物に対してすぐさま、何も迷うことなく義男は頬ずりをしたのだった。
右手できつく握り締めた蝋燭の炎が大きく揺らめいた時だった。
義男が何か呟いた。
「あぁ、僕の愛しい者よ」
消え入りそうなくらいか細い声だったが、机の引き出しから取り出した物に対して確かに義男はそう呟いたのだった。