そして、頬ずりした物を右手で強く握り締めた蝋燭の炎の灯りで煌々と照らし出したのだ。
するとその義男の“愛しい者”は、薄オレンジ色に輝きながら、くっきりと見事に姿を現したのだった。
それは、この間、例のバーチャル空間内で義男が仲間の前で話していた自分が粘土で捏ねて作った人形だった。
よくみると、それは女のようだった。
何故なら、お尻の辺りが割りと大きく女性特有の三角形の体型だったからだ。
頭部には、髪の毛らしい細工も見受けられ、肩くらいまでの長さで真ん中分けでおかっぱのように見える。
さらに、よくみると人形の胴や腰部分に何やら文字のようなものがナイフのような鋭利な物で刻まれているのが分かった。
目を凝らしてみるとすぐ分かる文字だ。
その文字は“M”という文字と“O”という文字がくっつけて刻まれていた。
これらの状況だけ描いても驚くべき状況なのだが、さらに愕然とすることは、義男の足元に蝋燭の炎の灯りによって魔法円が映し出されていたことだった。
つまり、こういうことだろう、義男は紛れもなくオカルティストだということだ。
わかりやすく言えば、オカルト愛好者とでもいうべきだろうか?
突然その時、また、義男が何か呟いた。
「あぁ、そろそろ喉が渇いたろう」
そう呟くとさらに自分の机の上を手でまさぐり、また、ある何かを持ち出したのだ。
その“ある何か”とは、小さ目の長方形の紙パックのようなものだった。
それにはストローらしきものも刺してあった、ということは、飲み物であるのは間違いあるまい。
次の瞬間、義男が取った行動はまさに恐るべき行動だった。
なんと、徐に、手に取った紙パックをギュッとつぶすように握り締めると、ストロー部分を人形に差し向け紙パックの中の液体を少量、注いだのだった。
すると、人形の文字が刻まれている胴から腰にかけての部分がが白い液体でベトベトになったのだった。
蝋燭の灯りの下、紙パックから浮かび上がった文字は確かに“ミルミル”と言う太文字のカタカナだった。