その時、既に時刻は深夜過ぎだったが、深夜3時ピッタリになると義男は魔法円の上に立ちはだかったまま、呪文のような物を唱えだしたのだ。
それは文字に表すと次のような物だった。
「ダーチェ、ベッチエ、ジュテートゥ、バーガラ、ラムチャプ、ウベラ、マルラァー、ベネッサ・・・・・」
どの呪文もどこでも聞いたことのない、摩訶不思議な言葉だった。
暫く、呪文は続いた、ちょうど3時5分になった頃だろうか?
と、突然、部屋の四隅から、小さな渦巻きのような光が湧き上がったのだ。
それは、紫色と桃色の光の旋風だった。
2色の旋風が部屋中を吹き荒れたのだった。
ただ、魔法円の中だけはどうしても入っては来れなかったが。
どうやらこの魔法円という物は、魔物の進入を防ぐバリヤーの役割があるらしい。
言い忘れたが粘土の人形の色も蝋燭と同じ赤だった。
正確に言えば真紅色だった。
旋風は最初は四隅から1体づつ沸き起こりその後すぐ部屋の中で融合し、いつの間にか紫と桃色の2体になっていた。
そして、3時15分にちょうどなった時だ、義男が大声で叫んだのだ!!
「出でよ!愛しい者達よ!」
すると紫と桃色の2体の旋風は激しく揺れ動きざわめき、溶け合い混ざり合い、美しい一つのハーモニーのように一体化したのだった。
その直後部屋中が、一瞬、稲妻に打たれたようにピカッと光り、その光が義男を直撃した為に義男の体が真っ白に光ったのだった。
それはまるで雷に打たれた状態だと言えばわかるだろうか?
義男の体がブルッと震えるように波打つとそのまま、バタンと魔法円の上から倒れたのだった。
一度だけ、ピクンッと体が動いたが、それきりピクリと動かなくなってしまったのだ。
蝋燭は運よく先ほどの旋風の勢いで炎で解けた蝋もろとも飛び散り、炎は消えていた。
なので、暫く、このまま義男が眠っていたとしても部屋が燃えてしまう心配はなかった。