―ここは例のバーチャル空間の中だ―
幸子が、アバターを使ってこの無次元の桃源郷の中で仲間とお喋りしながら戯れていた。
その仲間はこの空間の中で他の男性だと思われるアバターのキャラクターから紹介された友達だった。
しかし、幸子の方はまったく気づいていなかったが、実はその紹介された友達は、リアルでも知っている相手だったのだ。
な、なんと今、例のバーチャル空間で楽しそうにテーブルを囲んで向き合ってお茶をしながらお喋りをしている相手はあの伝言女性Aだったのだ。
だが、幸子はその事をまったく気づいていなかったし、知らされてもいなかった。
ただ、あの15人とそれプラスの仲間達は、何もかも知っていたのだ。
知っていながら、陰謀計画の為に引き合わせたと言うのが真実だった。
その頃には幸子も度重なるリアルでの陰謀集団の嫌がらせにより重度の鬱になっており、繰り返し訪れる躁鬱の波に打ちひしがれながら、恐怖心のあまり対人恐怖症になっていたのだ。
なので、もっぱら、暇さえあれば例のバーチャル空間に入り浸っていたのだ。
嫌がらせの内容は前にもお話したが、待ち伏せ、尾行、盗聴、メールハッキングなどだ。
怖くて友達同士のメールもできなくなり、メッセンジャーでさえもログを取られているような恐怖感に襲われ、例のバーチャル空間が唯一の憩いの場所になってしまったのだ。
実はこの伝言女性Aとは、陰謀集団の度重なる嫌がらせ攻撃の末、そのせいで、鬱になり会うことが不可能になり、幸子の方から交際を断っていたのだった。
ただ、その時幸子は陰謀集団のせいだという事は一言も伝言女性Aに告げなかったのだ。
平和主義で、お気楽、気楽の日和見主義の幸子にとって、やっかいな問題が次々頻発すると、それだけでもうこの人とは縁がないと見限ってしまう所があったのだ。
また、用心深い幸子は、相手の事を気遣うのと自分の保身の為に、自分から断ったのに相手から断られたとネット内の日記サイトに毎日のように書き綴っていのだから頭が下がる思いだ。
しかし、その善意から行った行動が後々大きな誤解と不幸を巻き起こすとは幸子はこの時少しも考えが及ばなかったのだった。
気づけばもう一時間以上もバーチャルの中で伝言女性Aと気づかずにそのアバターをお喋りをしていたのだ。
そのアバターの名前は、ライラだった。
ライラの話は驚くべき内容だった。
「そうなのよぉ、家も盗聴されたことあってね、彼氏が遊びに来た時の声を録音されて電話に出た時流された時は驚いたわ、あの時の声を流すのだけはやめて!!って思ったわ」