幸子はライラの話を嘘とは思わなかったが、少し大げさではないかとも思ったのだった。
確かに話には尾ひれがつくものであるし、そうかもしれないが。
ライラは例のバーチャル空間内で幸子と楽しげに談笑の最中にも常に周囲を気にしてビクビクしている感じだった。
リアルでも盗聴や尾行や行動観察などの嫌がらせに始終苦しめられていたが、その為にバーチャルの中でも常に誰かに監視されているような感じが抜け切れなかった為だった。
二人の話が盛り上がり、幸子が
「おほほほほほ、あなた、おもしろいわ、本当に楽しい人ですね」
とライラを持ち上げた時だった。
急にライラが
「あっ!、なんだか苦しい・・・うぅっ」
と言ったのだった。
幸子は思わず
「まあ、どうしたんですか?苦しいのかしら、大丈夫ですか!?」
と心配したが、ライラは、
「もう駄目、今日は落ちます・・・><」
と絵文字混じりにバーチャルの吹き出し内に文字を打ってきたのだった。
あっ!、と思った時にはもうライラは落ちてしまっていた。
その時、後ろからタイミングよく声をかけて来たアバターがいた、それは、なんとあの哲史だった。―無論、哲史の使用しているアバターの名前は別の名前だったが、幸子の方もそうだった、だがここではわかりやすくこうしておく―
「よう、お前も気をつけろよ!」
「何をですか?」
幸子が驚いたようにそう言うと
「俺もよう、知り合いの義男が亡くなってから原因不明の高熱がでて、ずっと寝込んでいたが、一週間たった今もまだ微熱が続いているんだぜぇ、米田もついこの間、急性神経性胃炎になったっていっているし、きっと、何かの祟りだぜ!さっきの女もたぶん、・・・だから、お前も気をつけろよな」
「この私(わたくし)に対してそんな口の利き方をしていいとおもっているのかしら?それに私の周りには、賢い人がいっぱいいるから、あんたのそんなくだらない話になんか誰も騙されませんよ!」