ハワイの旅先で、幸子と哲史は傍目には微笑ましいほどの仲睦まじいカップルに映っていたことだろう。
常に一緒に寄り添い哲史が幸子の肩を抱いたり、腕を組み合ったり、二人は、大変いいムードだったのだ。
哲史は、ビーチではパラソルのシートの上で寝そべりながら、ウトウトと昼寝をしていたのだった。
幸子も隣でノンビリと日焼け止めローションを顔や腕に塗りながら、のほほんと過ごしていたのだ。
初日は夜までは何もかも順調だったと言えよう。
ハワイのロブスター専門レストランで沢山のロブスターを食べ満腹になり、いよいよホテルに戻ると、例の幸子のあの飲みがまた始まったのだった。
やはりというべきか、誰もそれを止めることなどできなかったのだ。
哲史も例外ではなかった。
なすすべもなく幸子が厖大な量のビールをオーダーし浴びるように飲むのを呆然とただ見詰めているしかなかったのだ。
もちろんさっきのロブスター専門レストランやこれらの飲みの支払いもホテル代も含まれた今回のツアー代金もすべて哲史が支払うのだった。
まあ、哲史から誘ったのだし、当たり前と言えば当たり前なのだが。
憧れの哲史が好きな女優の松雪泰子にも少し幸子は似ていたので、哲史は今回一緒に旅行できたことが夢のように嬉しかったので、お金はいくら掛かろうが覚悟はできていたのだ。
まあ、幸子は松雪泰子の他にも故人タレントのOとかSにも似ているとモッパラの噂でそちらのファン達にも大人気らしいが。
と、その時だった、哲史が急に顔色を変えて、
「うぅ、腹がいてぇえ!!」
と叫んだのだった。
そして、そのまま、ホテルの部屋の中のトイレに駆けんだのだった。
幸子は心配そうに気を揉んだが、それもほんの一瞬のことで哲史が苦しんでいるのをよそにヒタスラ浴びるようにビールを呷っていたのだ。
スッカリ舞い上がって、突然の気候の変化に体がついて行けず健康を害したのか?それととも何かの呪いだろうか?
呪いならば、やはり義男なのか?!それは、考えれば考えるほど先の見えてこない迷路のような呪縛だと言えよう。
悲惨なことに哲史の腹下しは、ハワイにいる6日間の間ずっと続いたのだった。