バーチャルの桃源郷の扉を開けると、まず黒い画面が視界に広がり、その後数秒画面が固まった後、新たに広大に開けた無次元空間が現れた。
今、ここからまさに新しい世界が始まろうとしていた。
バーチャル専用のナビゲーターのメニューをクリックして中に入って行くと沢山のアバターたちが蠢いていたのだ。
「幸子を探すのよ!」
謎の美少女の声が頭の中でまた聞こえた。
今、まさに姿無きこの謎の美少女とライラは一心同体だった。
幸子は何か答えようと思ったが、その前にまず、今後呼びづらいので名前を聞いておこうと思った。
それで尋ねたのだった。
「あの、呼びづらいのであなたの名前を聞かせて下さい!!」
謎の美少女は恐らくニコッと笑ってこう答えたのだ。
「私の名前はユミコよ」
大変わかりやすい名前だったのだ。
ライラは、ホッとしてまず自分のアバターを決め、それから“ユミコ”にも、どのアバターにするのか促した。
するとユミコは、可愛い縦ロールのブラウンの巻き髪で薄紫のドレスを着た女の子アバターを選んだのだった。
これで、ここでの役割は決まったようなものだった。
ユミコは、このバーチャル空間の中でも指折りのお姫様候補になるのは、まず間違いなかった。
「幸子ならいつも自分専用の部屋を大人部屋のほうに出していますよ!」
まるで有能な情報部員のようにライラが報告をするとユミコは大変満足げに
「幸子なんかにこの空間を仕切らせてたまるものですか?!」
と息巻いたのだった。
「この部屋です!」
ライラが指差した部屋はこの空間の大人部屋コーナーにある“お洒落なBAR”と言うタイトルの部屋だった。