そうではあったが、ライラはライラなりに必死に二人の会話に付いていこうと努力はしていたのだった。
ライラが会話から取り残されがちで暇だったので、この“お洒落なBAR”のルーム内の部屋の隅にあるコーヒーマシーンからしきりにコーヒーのおかわりを頂いたのは言うまでもなかった。
ライラがコーヒーを2,3杯飲んだ後もまだ二人の会話は続いていたのだ。
そして周りにいた他の来客達も有名な悪女二人とオマケの様に傍にいるライラの奇妙な関係に敬遠をしながらも次第に興味を持つようになっていた。
そしてその来客達の中には、なんとあの義男の魔術によって急性神経性急性胃炎になった米田もいたのだった。
実は米田はこの時点でもまだ胃の調子が悪く、リアルでは常に急性神経性胃炎の漢方薬を飲んでいたのだ。
米田が急性神経性胃炎になった原因は義男の魔術によって急に体調に異常をきたしたのとなにやら不気味な幻聴や幻覚を聴くようになったためであった。
それは、若い女性のような声であった。
同時に目の前がチカチカ光ったり、幻覚のようなものを見たりしたので、ショックのあまり胃炎は慢性になりつつあるのだった。
米田はこの“お洒落なBAR”のオーナーの女のアバターが幸子であることは、とっくのとうに気づいていたが、その事は一言も口にはしなかった。
そしてライラがパスポートをプロに依頼して盗み取った相手の伝言女性Aであることも気づいていたがもちろんその事も知らないフリをしていたのだ。
相手が誰だか気づいていても決してその事を悟られてはいけないと義男から強く釘をさされていたのだ。
その理由が納得いかなかろうが、今の米田の状態だととてもではないが義男に逆らうのは不可能だったから。
どうせ意見しても、義男がまたあの不可思議なオゾマシイ魔術で米田を攻撃するに決まっているからだ。
ところで、幸子とユミコの会話はまだ続いていた。
「だからねぇ、私がいいたいのは、そうじゃないのよぉ!あなたもわかっているようでちっともわかっていないわぁ・・・」
「それはどういう意味でしょうか?」
「自分では気づいていないうちにいつのまにか相手の人生や何もかもを滅茶苦茶にしてしまっているって事、本当にあるのよぉ!嘘じゃないわぁ・・」
「それは、いったい誰のことでしょうか?」