半透明の上半身姿で、義男が幸子が間一髪の時に、幸子の自室にまるで救世主のごとく現れたのだった。
そして、その時の幸子の自室の状況は、先程、ユミコに断末魔の雄たけびのごとく喚かれた途端、突如苦しくなりもがいた時に自分の爪でデスクの上を思いっきり掻き毟ったので、その勢いでデスクの上から床の上に飛び散って書類やノートや文具類が乱雑に散乱していた。
それ程に苦しいのだろう。
それを察したかのように義男が優しくまた幸子に語り掛けた。
「苦しいのかい、彼女にやられたのだね・・可愛そうに」
そう語りかけられるとデスクの下で蹲ったままの状態で苦しくて気が遠くなりそうで今にも意識が薄れそうな幸子がなんとか余力を振り絞って掠れたか細い声でこう答えたのだった。
「あの・・うっっ・女性の・・・ことを知って・・・いるんですか?」
とても辛そうに声も途切れ途切れだった。
「知っているよ、あの子はユミコというのだけど、特殊な能力の持ち主でその気になれば人一人すぐ殺せてしまう力を持っているのだよ」
「それで・・・は、私・・は・・・この・まま・・では死・・・んでしまうの・・でしょうか?」
血の気の失せた様子で力なく幸子が義男に問いかけると義男は少しも怯むことなくこう答えたのだった。
「僕の術を使って君の苦しみを和らげることは簡単だよ、だけどもしもユミコに死の呪いをかけられていた場合はそれだけでは無理だよ・・・」
「私は・・・死の呪・・いを・・・かけら・れて・いる・・ので・・・しょうか?」
幸子がまた苦しそうに途切れ途切れにそう言い出した途端、義男が何やら呪文のようなものを小声で唱えだした。
すると幸子はみるみる顔色が良くなり、生気を取り戻し、さっきまでの苦しみが嘘のように消え去り、体がすぅ~っと楽になったのだった。
その様子を見て義男がニコニコと微笑みながらまた幸子にこう問いかけた。
「これでしばらくは大丈夫だよ、だけど死の呪いだった場合しばらくするとまた苦しくなるよ・・何しろあれは強烈な呪いだからね、何度も繰り返し死ぬほどの苦しみが訪れるのだからね」
「そうなったらいったいどうしたらいいのでしょう?」
幸子がまた恐怖に駆られて不安な面持ちで義男に問いかけると、まるで星の王子様のように瞳がキラキラと輝いて義男が頼もしげにこう答えたのだ。
「だから、僕も考えたのだけど、今、米田のとこに預けている僕の愛しい者を君の所へ送ることにしたよ、そして君を守って貰うのだよ」