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平成19年11月2日作成
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義男は、突然そのような艶っぽい仕草で迫ってきた幸子に対して男として、内心、グラッと着たのは否めなかった。

なので、この時ほど、自分に肉体がないことを悔やんだ瞬間もなかった。

義男は思わず幸子のことを、とても愛おしく感じ抱きしめたいという衝動に駆られたのだ。

「幸子君・・・・」

義男の半透明の上半身が、ゆっくりと静かに幸子の方へと忍び寄って行ったのだった。

だからといって義男は、もはや肉体のない身だったので、実際に幸子に触れることはできなかったが。

義男の半透明の唇が幸子の唇スレスレに近づいた時だった。

突然、幸子の自室のドアの扉(ドア)をバンバンと激しく叩く音が鳴り響いたのだ。

‘いったい、何事だ’と義男が扉の方へ目をやると扉の向こうからイキナリ大声がした。

「おい!聞こえるか!!俺だ開けろよ!!!」

な、なんとそれはあのチョット不良っぽい男、哲史の声だった。

そして、さらに扉を叩く音は次第に勢いをまして激しく鳴り響いたのだった。

義男も幸子も突然のハプニングでさっきまでのいいムードも一気に吹き飛んでしまい、せっかく盛り上がった気分もぶち壊しにされてしまったのだ。

「今開けますから!!それ以上激しく叩くと扉が壊れます!!止めて下さい!!!」

本当に予期しないあまりにも突然のハプニングに幸子も気が動転したが何とかやっと言葉を発したのだった。

そう言えば、今日は夫は出張でいないが、その事を知っていたのかしら、またそれと同時にどうやって侵入したのかしらなどという考えが瞬間的に脳裏を駆け巡ったのだ。

思えば哲史とは伝言女性Aのパスポートを使ってハワイへ旅行をした仲だった。

勿論、そのパスポートを使ったのはアリバイを作るためだった。

何しろ幸子は歴とした人妻なのだったからアリバイを作るのは当然のことだろう。

しかし、問題はその手段だろう。

いくらアリバイが欲しかったからといって、何も自分にあれほど奢ってくれたりよくしてくれた相手の女性のパスポートを使うことはなかろうに。

「開けましたよ!」


 


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