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平成19年11月2日作成
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4月6日に仲間は、上京してきたのであった。半分はそれぞれの親戚の下へ、そして残りの半分は、Aのアパートにとりあえず、居候することになったのであった。Aは自分のアパートの部屋で、集まった4人の仲間と、無精ひげを絶えず指で摘んで引っ張ったりしながら談笑をしていたのであった。仲間の4人は変わり果てたAの姿に驚きを隠せない様子だったのであるが、すぐに触れてはいけない何かに全員が気づいている様子であった。誰も一言も幸子のことをAに尋ねるものはいなかったのであった。第六勘だろうか、そのことをAに決して尋ねてはいけないということを瞬時に全員が察したのであった。みなAへの懐かしさと思いやりに満ちた態度であったが、いづれは誰かが幸子の話をしないではいられないのも気づいていた。その問題を最後まで避けるのは無理なのも全員がわかりきっていることであったのである。何しろ、幸子のことで話しがあるとAから、電話で切り出されたのもこれもまた真実、事実なのであったのであるから。

そろそろ、日が暮れだしてきていた。Aの目がハッキリとわかるくらい血走ってきだした時であった。仲間の一人が、その話題の口火を切ったのであった。「ところで、幸子は元気かね・・・」もっともらしく精一杯、穏やかに問いかけたつもりであった。その瞬間Aの瞳がうるうると潤んだようにもみえたが、すぐにまた激しく血走りを、気迫とともに周囲にその瞳から発する火花に似たギラツキを、撒き散らしだしたのであった。「元気も何も・・・・もうすぐ昇天するぜ!」
その声は笑いを含んでいるようにも聞こえたが、やはり主体は怒りと憎悪に満ち溢れて震えるように響いていたのであった。既にAの心は悪魔に蝕まれ、今となってはもはやそれを誰も止めることなどできない様子であるのであった。それを察した幸子のことを質問した仲間は、すぐに話題を変えようとしたが、Aはもう止まらなかった。「いいよ。誤魔化すなよ。きちんと話しようぜ。」「幸子は俺のことをボロ雑巾のように捨てたんだ。ただじゃすまさねぇ。」Aはそういい終えると、すぐに復讐計画の話の本題に入っていった。誰もそれに意義を唱えるものはいなかった。既に仲間たちもAと同じ気持ちになっていたのであった。彼らは仲間になるだけあって、思想もピッタリあっていて、抜群のコンビネーションだったのであった。それは今にはじまったことでないのである。故郷にいる頃から、彼らはいつもそうなのであったのであるから。

幸子に従順に仕えるパシリ時代から、彼らの仲間の呼吸はいつもピッタリと合っていたのであった。苦しい時も辛い時もいつも一緒なのであった。馬鹿にされればいつもみんなで励ましあっていたし、他のパシリのグループに幸子を取られた時は悔しくて仲間全員で涙していたほど団結力が強いのも思い出深いことであった。野暮用でも幸子の為に命令をされればどこにでも変わりばんこにすっ飛んでいたのであった。

だが、もうそれも限界が来ていた。そのような過去の行動はすべていつか自分たちの仲間の中から誰でもいいから幸子に選んでもらって、真面目に付き合ってくれるならとの一念での行動であったので、その頼みの綱であったAがいとも簡単に捨てられてしまったとなっては、これは仲間全員が同時に捨てられたのと同じことであったのである。喜びも一緒であるが苦しみも共に分かち合う習性が彼らにはごく日常の当たり前のことであったのであった。

彼らの結論はもう決まっていたのであった。・・・・そして、彼らは、その日から毎日、昼夜問わず交代で幸子の所属事務所周辺を見張るようになったのであった。

そしてAはなるべく近くのベンチで、仮眠しかとらないようにして常に周囲に控えていたのであった。もし、眠くなったのなら、頭からペットボトルに溜めた水道水をぶっ掛けたりしてもいたのであった。睡眠不足で、霞んだ目に遠くにカラスが群れをなして飛んで行くのが見えたのであった。

                                                          続くw



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アパートに戻ったAは、ショックと怒りに打ち震え床についたのであった。無理もない。あのような態度を取られれば誰だってそうなるのは当然であろう。気づいたらしゃくりあげて枕をビショビショにぬらしていたのであった。幾度も、止め処もなく、涙の筋が頬を伝っては落ちてきているのであった。もはやこのままでは、何処にも自分は帰る場所もなければ未来の希望ももうないのであった。少なくともその時はAはそう思っていたのであった。Aの脳裏にハッキリと幸子への復讐の思いが強く沸きあがってきたのであった。そしてAは必ずそれを実行しようと思ったのであった。心に、硬く決心をしたのであった。 

それからのAの行動は目まぐるしかった。その瞳は復讐の炎で毎日のように赤々と燃えていたのであるが、復讐の手段や、段取りは毎日飽きもせず長々と時間をたっぷりとかけて、構想を練りに練っていたのであった。故郷の幸子を囲んでのパシリ仲間とも連絡をマメに取り合っていた。仲間のほうから、電話も時折掛かってきて、数名、東京に来るはずの仲間の人数は7人で、Aをあわせると全部で8人になる予定であった。しかし6畳一間に8人はちょっときついよなと苦笑いをしていたが、そのうち半分は、東京に親戚とか友人がいるのでそこでお世話になるらしく、4人だったら何とかなるかなと思っていたのであった。少々部屋がきつくなってくるのは間違いなかったのであるが、元来お人よしで気のいいAは、そのことを苦にはしていなかったのであった。しかし、人がよくても幸子への怒りはもう収まりきらないものになっていたのであった。彼は幸子のこの裏切りを絶対に絶対に許せないと思っていたのであった。

 まず、先程話した復讐の手段であるが、それはどういうものかというと、まず彼女の連絡先はわからないが、彼女の事務所はハッキリと場所がわかっているので、そこをターゲットに動くということであった。つまりそれはどのような事であるかと言うと、できる限りマメにその事務所ビル周辺をうろつき徘徊をするというものであった。一見そんな、なんともお粗末なやり口と思われるが、実はこの行動は何よりも重要なことであったのであった。そこだけがはっきりとした彼女の所在地である以上そこをターゲットに動く以外、手段は何一つないのであるのだから、探偵を雇って彼女の住まいを発覚するには多額な金が必要であるし、そのような大金は現在Aは持ち合わせていなかったのであるから。 

そして3月の末ごろから、毎日のようにAは、幸子の所属事務所周辺をうろつくようになったのであった。無精ひげも剃らずそのまま伸ばし放題で、煤けた暗い色の帽子を深々と被って元の人相がわからないように色つき伊達めがねも欠かさなかったのである。まるでその姿はさながら薄汚れたスラム街の乞食のようであった。もはや前の爽やかで好青年のAの姿は、既にそこにはなかったのである。街のビルの上の大きなスクリーンに幸子の姿が映ると、突然に、まるで狼の遠吠えのように大きなドラ声を辺り一面に轟かせて、周囲の人々を不気味がらせたりもしていたのであった。 しかし、その孤独な徘徊活動もそう長くは続かなかったのであった。 そう、もうすぐ仲間が上京してくる。そうしたらすぐ本格的に行動をはじめてやる!Aのその本格的行動とはいったいなんなのであろうか?想像するだに恐ろしいのであった。そして、とうとう仲間が上京してくる日がやってきたのであった。                                                                 
続くw

待ち合わせ場所は、新宿のWというホテルのロビーだった。幸子はまだ来ていなかった。深夜12時の待ち合わせだったが20分を過ぎても、幸子はまだホテルのロビーには現れなかったのであった。さすがに心配になってきたAはホテルロビー内をぐるぐる歩き回ったり、していらいらしだした様子になってきたのであった。―果たして、幸子は来るのであろうか?次の日の約束を忘れることなんてあるのであろうか?―いらいらして過ごすこと十数分、果たして幸子は、・・・・と、その時、ホテルロビー玄関の回転扉から幸子の姿が突然現れたのであった。時刻はちょうどその時12時37分であった。とにかく幸子は約束どおり待ち合わせ場所に来たのであった。幸子は真っ黒の洒落たサングラスをしていた。たぶんどこぞのブランド物だろう。ブランドに疎いAはそのメーカーがどこのブランド物かを見分けるのは不可能であった。真っ黒なこれまたブランド物と思えるワンピースを着た幸子の姿はどこかの深窓の令嬢を思わせる風情があったのであった。地味な装いのAと一緒だと非常に目立つ感じであった。「これじゃ釣り合いが取れないね。」思わずAはそう言ってそのあとなぜだか知らないが非常におかしい気分になってきて、クスクス笑い出したのであった。それをみて幸子も同じように笑ったのであった。

「カフェでお茶でも飲みましょう。」「ああ、いいよ」二人はホテルロビーにある、カフェの窓際の席に着いた。「私さ、実は悩んでいるのよね。「いったい、何を?」「うん、それはね。」「うん、うん、」「今の業界に友達がいないことかな・・・」「それで、誰か知っている人が同じ業界か、それが無理でも、関係の深い業界にいれば心強いなって思ってね。」「それ、俺にその業界とやらに入ればってこともしかして?」「実はそうなの!」Aはあっけにとられた。いきなりなんてことをいうのかとも思ったのであった。確かにAは見栄えもそれほど悪くはなかったのであるが、芸能界というものに常日頃から苦手意識と、自分には到底向かないという意識しかなかったのであったので、Aは即座にその話を突っぱねたのであった。「ごめん、俺はそういう業界駄目なんだ・・・。」「すまないw」Aは両手を合わせて幸子を拝むポーズをしていたのであった。幸子は仕方ないわねという顔をしたのであるが、その時な、なんと幸子は、事態が突如急変するようなとんでもない台詞をはいたのであった。「だったら、私たちもう終わりね。」「え、なんてことをいうんだい。」「自分から突然呼び出して置いて、突然なんて言い草だい!」その時激しい怒りと憎悪が一気にAの心の中にこみ上げてきたのであった。無理もないさっきまでAは幸子の本命のつもりでいたのだから、同じ業界にはいれないくらいで別れたいと言われること自体心外で信じられないことだったのであるから。

Aが突然の別れ話に、ショックでものすごい形相になるや否や、幸子はさっとその場を立ち去ろうと踵を返して、カフェの入り口の方へ小走りをしだしたのであった。「おい、待てよ」慌てて追いかけようとしたAであったがお茶もまだであったが伝票もまだなのに気づきこれだけあれば足りると思いお釣りもいらないという形でそのまま1000円札をテーブルの上に置き、すぐさま幸子の後を追ったのであった。

しかし、もう幸子はもう既に会う前からAのことをとっくのとうに、胡散臭いと思い始めていたのであったのであるから、やっとその本心を本人に言えてスッキリした状態であったので、できればこのまま右と左に分かれたいくらいなのであった。生活観とか世界が変わると今まで長年付き合ってきた恋人を捨ててしまう。そんな話は昔から五万とあるのであるが、この二人はそれとも少し、嫌、だいぶ違っていた。最初から幸子にとって、幸子が芸能界に入る前から、Aはただのパシリの存在でしかなく、少なくとも幸子から見てこのAなる男が自分の恋人などと思うことはただの一度もなかったのであるから。

いつの間にか外に出て暗がりを走る幸子のことを、後ろから追いかけている自分の哀れな姿にAは気づいたのであった。なんとも惨めな様であり、今日のこの時までの薔薇色の気分はどこかに吹き飛び去り、自分の顔が鬼面のように変化していくさまを感じずにはいられなかったのであった。心は憎しみの炎が吹き荒れていたのである。このまま幸子と終わってしまったら、このあといづれ上京してくる他の仲間にどういう顔をすればいいのであろうか?そういう問題も、頭の中を走馬灯のように巡りだしているのであった。

上京してきた仲間の前で笑い者になる自分の姿が、何度も頭の中に浮かび屈辱で額から汗がたくさん流れ落ちだし、苦痛で顔が歪んできだしたのであった。「いったい。全体なんてこったい!」あきれ返るようにそう呟きながら改めて辺りを見回すと既に幸子の姿はどこかに掻き消えていた。Aは心に誓った。「幸子!俺はお前を許さない。このままで済むと思うなよ。」夜空を見上げると満月が黒い雲の隙間から見え隠れしていた。Aはそこで深いため息を何度も吐いてから、身のそこから湧き上がる激しい苦痛と怒りに対して、もだえながら深呼吸をして体制を整えたのであった。

                                                        続くw

その戸惑いは図星であった。幸子はAが迷う以上に、はっきりと嫌悪感もあるほどにAと縁を切りたがっていたのであった。有名スターとなった今となっては幸子にとってAの存在はただただ邪魔でしかなかったのであった。Aのほうはもう幸子からプロポーズを受けている気分から抜けきれないのであったので、まさか幸子が自分と縁を切ろうとしているなどと予想もしていなかったのであった。なので、Aのほうは今すぐ一緒になろうと言われても困るなという、なんともおめでたい自意識過剰に基づいた見解で心が揺れているだけであったのであった。その大きな見当はずれは、むしろ、今すぐにも不幸な険悪なムードに突入するのだけは少なくとも防いでいるはずであった。

長い沈黙に耐え切れずAは自分のほうから「忙しいならいいよ。また電話して」と即座に告げると受話器を電話機の上に置いたのであった。Aはこの時点でも幸子の本心にはまったく気づくこともなく陽気に鼻歌を歌いながら、これからしばらくお世話になるであろう、アパートの部屋の掃除をはじめたのであった。なんともおめでたいAの行動であった。

部屋に自宅から持ってきた今ではアイドルの幸子のポスターを天井に貼り付けると、Aは満足したかのように部屋の中央に大の字に寝転んだ。その部屋は和室の6畳一間で風呂なしであったが小奇麗で、手入れが行き届いているようにみえた。流しもピカピカに磨かれていた。トイレは共同で廊下の先にあった。他の部屋は全部で7つくらいありAの部屋をいれてちょうど8つであったと思う。それゆえ安上がりだった割には隣人が多いという点で、安心感があった。今のAの経済力ではこの状態がせいぜいであった。「これから俺の新しい人生がはじまる」Aははっきりとそう思い。顔は笑顔で満面であったのであった。やがて訪れる恐ろしい事態にその時は少しも気づくこともなくAはすっかり満足しきった様子で、アパートでゴロゴロと寝そべっていたのであった。寝そべりながら、東京駅の販売店で買ったお菓子のポテトチップを口にほおばっていた。いづれにしてもとても楽しげなAであった。その姿は間違いなくその時点では幸せそのものであった。あくまでその時点では。

そして、それとはまったく逆に、幸子のほうはまるで悪夢に遭遇したたかのように気分が落ち込み荒れていたのであった。―このやっかいものをなんとしてでもこれ以上自分に深入りしようとしてくるのを阻止しなければ、―その思いで幸子の心はいっぱいに膨らんでいたのであった。ただAを簡単に突き放すことも不可能に思われたなんといっても事務所が某有名プロダクションビルであり、このビルが移動するということはどうにも考えられなかったし、たとえ、幸子が事務所を移籍したとしても、芸能界の事務所はどこもみな有名なので今となってはここまで名が知れた幸子にとってどこの事務所に移籍して移動しようがAがその気になればどこまでも追跡可能であったのであるから。幸子は一気に憂鬱になり顔色はみるみる蒼ざめてきたのであった。

なんとかしなくては、―時刻はちょうどある年の3月上旬の夕方の7時を指していた。―幸子はあせった。はっきりと、額から汗がでて、伝い落ちてくるのを頬に感じたのであった。血の気が引いたように蒼ざめた表情で、幸子が自分のマンションの部屋の電源ボタンを押した時に、ある考えが幸子の脳裏を過ったのであった。そしてその考えは必ず実行しなければならないと幸子は固く心に誓ったのであった。

Aは東京に着いた次の日、すぐに仲間に無事ついたことを電話で知らせた。その時に仲間の何人かから、もうじき自分たちも東京に行けたら行きたいと言われ、Aは咄嗟に「住まいがないなら俺のとこに来てもいいよ。」と軽く言ってしまったのであった。しかし、Aは決してみみっちくてケチな男ではなかったので、その言葉を失言とは思わなかったのであった。一人でいるのも何かと寂しく、いつかかってくるかわからない幸子からの電話を待つのも辛かったのであったのだから、・・・・・。

Aは仲間がいつか来るのを楽しみにしながら、東京でアルバイトを探すことにした。そしてそんなある日また幸子から電話がかかってきたのであった。「せっかく東京に来たのだから会いましょうよ。」「もちろん、そのつもりで出てきたよ。」「どうせなら明日はどう?」「だけど人目につくとやっぱり困るので深夜じゃないと駄目だけどいいかしら?」「構わないよ」そんな会話が続いたのであった。

そして、その明日の深夜はあっという間にやってきたのであった。Aはまだ東京にきたばかりで母に頼んでいた足りない荷物が届くのがまだだったために東京に来た当日の姿、そのままに、着の身着のままの状態であった。それでも心は楽しげに踊っていたのであった。そして、深夜の約束の時刻になると、幸子との待ち合わせ場所に直行したのであった。

                                                       続くw

 

 

 

 

 

 

そして、とうとうその日はやってきた。この時が実現したのもすべて仲間のおかげでもあったのであった。Aへの幸子を囲んでの昔ながらのパシリ仲間からのカンパは惜しみなくAに対して与えられたのであった。仲間たちからしたら、仲間の喜びは自分たち全員の喜びでもあるのであるから、当然早くその時を実現すべく、湯水のごとく東京へ行く資金繰りのカンパをAに降り注いだのであった。その善意と協力がとうとう実る日が来たのであった。それは確かある年の3月上旬のことであったと思う。

駅のホームには中学生時代からの幸子を囲んでのパシリ仲間が、ズラリと全員勢ぞろいして、もうすぐ出発する電車の中にいるAを見送ろうとしていた。その人数はザッと30名ほどであろうか?思ったよりその日が早く実現したのも、実をいうと最近幸子との連絡が途切れがちでAが、イライラしてきていたのもその原因のひとつであった。そのことをAはすぐにパシリ仲間たちに相談をしたのであった。その他にも、Aは電話がやっと来てもその内容があまりに素っ気無いのにも悩みだしていたのであった。ひどい時はろくに会話もせず「またかけるね」と一言でガチャ切りも増えていた。そうこうしているうちに、東京に行く以外は彼女の心を繋ぎ止めるのはもはや無理だとAも確信するにまで至っていたのであった。

いくら幸子が連絡先を教えなくとも、もう今や幸子はアイドルであり、有名人であったので、彼女の事務所の所在地はもうわかりきっていたのであった。無論Aはその近郊に住まいを借りる手はずを、既に整えていたのであった。

そして、念願の東京に彼は今、着いたのであった。東京駅からさらに代々木方面の電車に乗り換え、代々木駅で降り、そこから徒歩20分ほど歩いたとこに彼の新居はあった。古びたアパートであった。

最初に話した幸子の一縷の悩みが異性関係と話したが、実は幸子はこの取り巻きのパシリたちをどう清算しようかと悩んでいたのであった。今や売れっ子の彼女にとって、事務所まで押しかけられて騒がれてはここまで築き上げてきた人気や実績に簡単に罅をいれ、いやそれどころか、歌手生命まで奪われてしまう自体にもなりかねないと先を思いやって悩んでいたのであった。それは無理もないことであろう。過去にも一連のスキャンダルに悩み歌手生命やアイドル生命を奪われたタレントは少なくなかったのであった。幸子もまたその不安の影に怯えるようになっていたのであった。

事実つい最近Aに電話をした時にAの「もうすぐ東京に行く。」という言葉に幸子は本気で悩むようになっていのであった。その為に不安で眠れない夜もあるくらいであった。

「どうしよう。せっかくここまで人気を築き上げてきたのに・・・・・。」幸子は自然に冷や汗がでて吐き気を催してしまうことも次第に増えていったのであった。すべて悩みの為に神経が磨り減ってきている為であった。仕事中も常に胃薬を携帯するようになっていた。実際今ではオリコンで上位にはいるほどの人気であったのであった。ここまで築き上げたものを失うのはどうしても嫌であったのある。それは当然のことであろう。

そして嫌ではあるがいきなり連絡を絶つとどういう風に出てくるのか心配でもあったので幸子はAにまたいつものように公衆電話から電話をかけてみた。するとすぐにAの母がでて、「あの子は東京へ行きました。新しい電話番号を託っています。」といい、すぐに幸子にその連絡先を告げたのであった。この時、Aの母親が幸子のことをあのテレビにでている売れっ子芸能人と知っていて話していたかは謎である。

そのあとすぐに幸子は新しいAの電話番号に電話をかけた。無論公衆電話からであった。すぐにAは電話口に出た。「どうしてきちゃったのよぉお~~!」「約束したじゃないか」「約束って何が?」「東京に行けばもっと会えるって・・・」幸子は無言になった。「幸子・・・・」Aは戸惑ったのであった。

                                                               続くw

 

 

 


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